不登校ケア


不登校支援に鍼灸を

私は14年間,奈良県内の小学校で教諭職を務めておりました。学習指導をはじめ,子どもたちとの関わりには日々充実した手応えを感じる一方,毎年不登校もしくは不登校傾向の児童を担任する中で彼らとの接し方にはいつも悩んでいました。日本学校教育相談学会の勉強会に参加し,不登校支援に必要な知識やスキル等を習得し,より真摯に彼らや彼らの保護者と向き合うよう努めました。それでも,保護者も含めて学校に行けない本人たちが肩身の狭い思いをしたり,傷ついたりしている状況は一朝一夕には改善せず自身の力のなさを痛感いたしました。

そういった日々の中で私に一つの転機が訪れました。妻の体調不良をきっかけに鍼灸治療と出会い,子どもを対象とした刺さない鍼治療「小児はり」があること,不登校の要因に起立性調節障害や過敏性腸症候群といった心身症といわれる状態が関係していることもあり,そういった自律神経の失調症状に鍼灸治療が効果的であることを知りました。当時私は不登校支援を考えるとき,まずは心の問題と捉えてカウンセリング的な手法を熱心に学んでいましたが,心と体はつながっており,心理カウンセリングを効果的に役立たせるためにも,まずは体を整えていくことが大切であることに思い至りました。

昨今の不登校者数の増加が日本社会の不安やストレスの写し鏡だと捉えたとき,心と体,人間と自然のバランスを説く鍼灸治療の背景にある東洋医学的な思想も大変学びが多く,当初独学しておりましたが,ついには教員を退職し,小児はりで体や自律神経を整えて不登校の予防や不登校児の支援のできる鍼灸師を目指すようになりました。国家資格取得後は,さらに研鑽を積むため茨城県つくば市にある大学附属の医療センターにて卒後研修プログラムに参加し,多くの臨床経験を積みました。研修終了後は同施設の非常勤職員を経て地元の奈良へ戻り,念願の鍼灸マッサージ院を開業いたしました。

   随分と廻り道をしたようにも思いますが,そういう人間だからこそ不登校の子どもたちの良きサポート役になれるのではないかと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

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